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藁谷 翼 税理士事務所

事業計画書(創業計画書)とは

2024.09.23 更新

金融機関から融資を受ける際には、事業計画書を提出する必要がありますが、融資の有無は別としても、事業を円滑に進めるために、事業計画書は作成しておくとよいでしょう。
今回の記事は、前半では事業計画書が必要な理由を解説し、後半では日本政策金融公庫の「新創業融資制度」の概要と融資を受ける際の事業計画書の書き方について紹介します。

事業計画書と創業計画書の違い

「創業計画書」は、事業を始めようとした際、どういう事業を始めたいかを説明するために作られる書類です。「事業計画書」は、事業を行なっている時、どういう事業をしているかを説明するために作られる書類です。創業計画書は事業計画書の一つですので、創業計画書を事業計画書と同じ意味として扱うこともあります。どちらも、融資で資金を調達する場合、金融機関独自の書式での書類提出を求められます。

以下に創業融資の基本となる新創業融資制度の概要や、創業計画書に記入する項目ごとのポイントについて解説いたします。

事業計画書が必要な2つの理由

理由①:事業の方向性を確認するため

事業計画書は事業の目的を実現させるための指標です。事業を成功させるための展開方法や売上推移、財務計画などを事業計画書にまとめていくことで、どのタイミングで何をやらなければいけないかが明確になります。

頭の中でイメージするよりも、事業計画書に落とし込むことで、より具体的かつ戦略的に事業を進めていくことができます。

理由②:金融機関等に対して事業内容を伝えるため

事業を進めていく上で、資金調達は重要な課題です。資金調達方法は様々ですが、金融機関からの融資やVC(ベンチャーキャピタル)やエンジェル投資家から出資を受ける場合には、事業計画書は必ず必要となります。
また、資金調達以外でも、自社の役員や従業員と事業の方向性を共有する際にも事業計画書を基にすることで、経営者の方が思い描いているイメージをより具体的に伝えることが可能です。

創業計画書が必要になる融資とは

創業融資の申込みでは、ほとんどの場合で創業計画書が必要となりますが、その中でも最も代表的なのが日本政策金融公庫の「新創業融資制度」です。ここでは、まずは新創業融資制度がどのようなものかについてご説明します

新創業融資制度の概要

新創業融資制度の利用には創業にかかる経費の1/10以上の自己資金が必要となっています。
しかし、これは1/10の自己資金があれば残りの9/10について融資が受けられるということではないので注意が必要です。
これは200万円の自己資金があるからといって、その9倍の1,800万円の融資が受けられるわけではないということです。

実際のところ、受けられる融資がいくらぐらいかといえば、一般的には自己資金の3倍から4倍程度が融資の出やすい範囲とされています。
つまり、200万円の自己資金がある場合には、600万円〜800万円程度あたりがバランス的には限界といえます。
ただし、この場合には、600〜800万円の創業計画を作るのではなく、これに自己資金200万円をあわせた800〜1,000万円の創業計画を作る必要があることに注意が必要です。

新創業融資制度の特長

新創業融資制度には、次のような特長があります。

一定の自己資金が必要

新創業融資制度の申込みをするためには、創業にかかる経費の1/10以上の自己資金があることが必要となります。
これは、融資申し込みの必要条件であるため、この要件を満たせないまま申し込みをした場合には、融資を受けることはできません。
しかし、
・現在の企業に継続して6年以上お勤めの方や、現在の企業と同じ業種に通算して6年以上お勤めの方
・大学等で修得した技能等と密接に関連した職種に継続して2年以上お勤めの方で、その職種と密接に関連した業種の事業を始める方
など、一定の特別な要件を満たす方については、自己資金がなくてもこの融資の申し込みをすることが可能です。

新制度を利用できるのは「事業開始後税務申告を2期以内」まで

新創業融資制度は、新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方が利用できる制度です。
そのため、この期間を過ぎている場合はこの融資制度は利用できず、通常の一般融資を利用することとなります。
なお、ここで注意しなければならないのが、期限は「2年ではなく、2期」だということです。

例えば個人事業が10月に開業した場合には一期目は実質的に3ヶ月で終了してしまうことになりますのでトータルで利用できる期間は1年3ヶ月となります。
このようにこの融資制度を利用できる期間は、いつ開業したかにより異なることに注意が必要です。

法人については、代表者保証なしで利用できる

新創業融資制度は、「無担保・無保証」の制度です。
しかし、この制度が他の無担保無保証制度と大きく異なるのは、「法人で申し込んだ場合には代表者が連帯保証人にならなくてもよい」ということにあります。

通常、無担保無保証といわれる融資では、法人が申し込んだ場合にはその代表者が必ず連帯保証人となります。
しかしこの制度では、代表者が連帯保証人となる必要がないため、借入れをした企業が万が一倒産したような場合でも、代表者が責任を負うことはありません。
なお、もし、法人で代表者があえて連帯保証人となる場合には、ならない場合よりも利率が0.1%低減されます。

「自己資金10分の1以上」の注意点

新創業融資制度の利用には創業にかかる経費の1/10以上の自己資金が必要となっています。
しかし、これは1/10の自己資金があれば残りの9/10について融資が受けられるということではないので注意が必要です。
これは200万円の自己資金があるからといって、その9倍の1,800万円の融資が受けられるわけではないということです。

実際のところ、受けられる融資がいくらぐらいかといえば、一般的には自己資金の3倍から4倍程度が融資の出やすい範囲とされています。
つまり、200万円の自己資金がある場合には、600万円〜800万円程度あたりがバランス的には限界といえます。
ただし、この場合には、600〜800万円の創業計画を作るのではなく、これに自己資金200万円をあわせた800〜1,000万円の創業計画を作る必要があることに注意が必要です。

創業計画書の書き方のポイント

ここでは、各項目ごとのポイントや注意点について解説いたします。

創業の動機

この箇所ではなぜ、創業する気になったのかについて記載します。
以下の項目を説明に入れることで、意気込みだけでなく今後の事業に対する準備ができていることをアピールすることができます。

・創業のきっかけとなった出来事や想い
・創業についての現在の準備の状況
・営業をするにあたっての取引先の確保の状況
なお、 実際には達成が難しいような内容や計画を立て、しかも具体的な裏付けもないプランとなっていないか注意して作成する必要があります。

したがって創業計画に記載をする時には、熱意ばかり語るのではなく「なぜそれができるのか」という点をアピールすることをおすすめします。

経営者の略歴等

ここでは、経営者の経歴等を記載します。
具体的には、最終学歴や職歴などを記載しますが、これ以外にも過去における事業への貢献や褒章などがある場合には、それらについてもあわせて記載します。
なお、職歴について「〇〇課に所属」や「◯◯に従事した」のように簡単に書くのではなく、実際にそこで行った作業内容などについても詳細に書くようにしましょう。
こうすることで、今後の事業についてどんな経験があり、どんなことができるのかをアピールすることができます。
また、取得している資格や特許などがある場合にも、あわせて取得資格や知的財産権等の箇所に記入します。

取扱商品・サービス

取扱商品については、その品目や単価、数量を記載しますが、サービスについてはその内容だけでなく、飲食店などのようにランチ営業と夜営業をするような場合にはそれぞれの内容を具体的に記載します。
二部営業をするときには、それぞれで客層や単価も異なるため、それぞれに応じたプラン内容を説明する必要があります。

セールスポイントは、実際の営業で集客が可能となるプランは何かを考えてうちだしましょう。
ありきたりなプランや、魅力のないものでは、評価が低くなるだけでなく、営業を開始後に経営が行き詰ってしまう可能性が高くなるため、できるだけ強みのあるプランを考えることをおすすめします。
また、外部環境分析、強みと経営資源の分析、公的なデータなどを使った説明をすることで説得力が増します。

取引先・取引関係等

取引先は、「一般顧客を対象とするケース」と「具体的な相手がいるケース」の大きく2つに分けられます。
一般顧客を対象とする場合には、売掛けは基本的には発生しないため、現金だけの回収となります。
また、具体的な相手がいるケースでは、取引先ごとにシェアや掛割合、回収・支払い条件を記入するようにします。
なお、個々で取引条件が異なる場合には、資金繰りにも影響が出るため、この点にも配慮して計画を作る必要があります。

必要な資金と調達方法

この箇所では、事業を行うために必要となる資金とその調達の方法について記載します。
「必要資金」の欄では、資金の具体的な使い道と金額を、運転資金と設備資金に分けて記載します。
また、「調達方法」の欄では、事業に必要な資金をどこから、どのような手段で調達するのかを記載します。
この場合の「必要な資金」の額と「調達の方法」の合計金額は、必ず一致させます。
また、設備資金については、見積書の金額と一致するように記入してください。
また、外部環境分析、強みと経営資源の分析、公的なデータなどを使った説明をすることで説得力が増します。

事業の見通し(月平均)

事業の見通しの箇所では、創業当初および創業1年後の収支の見込みを「売上げ〜経費〜利益」およびその見込みの根拠とともに記載します。
しかし、記載例で表示されている形式のまま作成するのではなく、別紙として1ヶ月ごとの事業計画表(月次推移表)と月次資金繰り表を作成しましょう。
これであれば、月単位の収支状況やおよそのキャッシュの動きを把握できます。

自由記述欄

創業計画書「自由記述」欄は、追加でアピールしたいことや欲しいアドバイスなどを記入する箇所とされていますが、何も記入しない方が少なくありません。
市場・競合の調査資料、集客の根拠となる資料をつけたり、記入することで、さらなる評価アップを狙うことができます。

まとめ

日本政策金融公庫の新創業融資制度は、利用条件が比較的簡単なものが多いですが、自己資金の要件についてはこれを満たしていないと融資が受けられなくなるため要注意です。
弊社では、創業計画書の作成支援もさせていただいております。
創業計画書の作成、創業後の顧問について、お悩みでしたら、弊社までお気軽にご相談ください。