スタートアップサポート総合会計事務所
藁谷 翼 税理士事務所

法人と個人事業主はどっちが得?

事業を始める際、法人か個人事業主のどちらを選ぶべきかで迷っている方がいるのではないでしょうか。
今回は会社(法人)と個人事業主のどちらが得かについて違いやメリット・デメリットとあわせて解説します。
また、個人事業主が法人成りすべきタイミングについても解説するので、参考にしてみてください。

法人と個人事業主の違い

個人事業主と法人の違いを下表にまとめました。

※表が見切れている場合は右にスクロールしてください。

比較項目 個人事業主 法人
1.事業開始までの手続き 開業届を税務署に提出
※青色申告を希望する人は「青色申告承認申請書」も提出
法務局での法人登記
※会社設立に必要な書類や会社印の用意が必要
2.事業開始までにかかる費用 0円 法定費用+資本金
【法定費用】
株式会社:約25万円~
合同会社:約10万円~
3.税金
  • ・所得税
  • ・個人住民税
  • ・個人事業税
  • ・消費税
  • ※所得税は所得が多くなるほど税率(最大税率45%の超過累進税率)が高くなり、控除が少なくなる
  • ・法人税
  • ・法人住民税
  • ・法人事業税
  • ・消費税など
  • ※法人税(最大税率は23.2%)の対象となる
4.社会保険負担の有無
(従業員分含む)
なし
(従業員5人未満の場合)
あり
5.事業維持にかかる費用 なし
  • ・赤字でも7万円の法人税がかかる
  • ・社会保険料の企業負担あり
6.経費の範囲
  • ・事業にかかる費用は基本的に計上できる
  • ・自分への給与や生命保険料は経費にできない(後述)
  • ・個人事業主よりも経費の範囲が広い
  • ・個人事業主では経費にできない以下のものも経費計上できる可能性がある
    • -社宅の家賃
    • -出張時の日当
    • -生命保険料(法人契約)
    • -役員報酬(自分・家族)
7.社会的信頼度 法人に比べて低い
※事業を行ううえでの支障は特にない
高い
※新規の契約や融資にも有利
8.資金調達 小規模な資金調達方法がほとんど 大規模な方法での資金調達が可能
9.事業の廃止 廃業届を税務署へ提出 法務局や税務署などへの解散登記・公告などが必要
(少なくとも8万円程度はかかる)
10.事業承継のしやすさ しにくい しやすい
11.赤字の繰越 3年
(青色申告の場合)
10年
12.責任範囲 無限責任 有限責任
13.会計・経理 個人の確定申告 法人決算書・申告
(税理士が必要になることが多い)

法人と個人事業主の経費にできる範囲の違い

個人事業主と法人の違いを下表にまとめました。

※表が見切れている場合は右にスクロールしてください。

比較項目 個人事業主 法人
事業にかかった費用 経費になる 経費になる
経営者本人の役員報酬・退職金 経費にならない 経費になる
福利厚生の費用 経費にならない 経費になる
健康診断の費用 経費にならない 経費になる
社会保険料 経費にならない 経費になる
生命保険料 経費にならない 経費になる(法人が契約者の場合)
出張時の日当 経費にならない 経費になる
住宅費 経費にならない 経費になる(社宅制度が使える)
水道光熱費 事業とプライベートのどちらで使ったか曖昧な費用は、家事按分を行い一部費用計上可能 経費になる
家族を従業員とする場合の給与・賞与・退職金 事前に届け出れば経費になる(退職金は認められない) 事前の届け出がなくても経費になる
交際費 全額経費になる 年間800万円まで経費になる(資本金1億円以下の中小企業の場合)

上記より経費として落とせる範囲は、法人の方がかなり広いことがお分かりになるかと思います。

個人事業主よりも法人化をオススメする方

ここまで、法人と個人の違いを開設しましたが、次に「自分は法人か個人事業主のどちらで事業をスタートすれば良いのだろうか」という点について解説いたします。
以下に当てはまる方は法人として事業を行うことをオススメいたします。

法人相手の事業をしたい人

法人相手の事業(BtoB、BtoBtoCなど)を主軸に行っていきたい場合は、個人事業主ではなく法人を設立することをおすすめします。
その理由は、法人が相手のビジネスの場合は「個人事業主では信用できない」と思われて成約しないリスクが高くなるからです。
一般的には個人事業主は廃業のハードルが低いため、「いつ商品・サービスの提供が停止してしまうかわからない」という認識をビジネスの場ではもたれており、また、上場企業等の大手企業では個人事業主とは取引をしないと決めている会社も少なくないからです。

多額の資金調達をしたい人

株式会社を設立すると、銀行等の融資以外にも株式を発行することで金融機関やベンチャーキャピタルなどからの出資を受けやすくなるため、数億円規模の資金調達も可能となります。
大規模な資金調達を行って事業を拡大させていきたいという場合は、法人を設立するのが良いでしょう。

優秀な人材を採用したい人

社長一人で小規模にビジネスを行うのではなく、従業員を雇って事業を拡大させていきたい場合にも、法人を設立する方がおすすめとなります。
売上を増やして利益を大きく獲得するには、仕事量を増やしていかなければなりませんので、社長一人でカバーできる仕事量には限界があるため、社長一人の場合の売上は必ず頭打ちになってしまいます。
そのため、積極的に事業を拡大させるためには人を雇い入れ、処理できる仕事量を増やす必要がありますが、個人事業主には不安定なイメージがあり、数ある求人先の中から選んでもらうのは難しくなると思います。
また転職・求人サイトでは個人事業主を求人募集に載せられないというサイトがほとんどとなっております。

利益が800万円を超えそうな人

開業初年度から年間利益が800万円を超えそうな人は所得税率が法人税率を逆転し、収める税金が高くなるため、最初から法人として事業を行うことをおすすめします。

法人成りのタイミング

既に個人事業主として開業しているが法人化を検討したい人は次のタイミングで法人化を検討することをオススメします。

前年の売上高が1,000万円を超えた人

現在、既に個人事業主としてビジネスをしており、その前年の年間売上が1,000万円を超えている人は翌年、消費税の納税義務が生じるので法人化をおすすめします。
消費税は、2事業年度の課税売上高が1,000万円を超えていると、消費税の納税義務が発生します。
このタイミングで法人成りする場合、法人では2事業年度前が無いため消費税の免税事業者となり、消費税の納税義務が免除されます。
したがって、個人事業の前年年間売上が1,000万円を超えたタイミングで法人成りすることで消費税の納税が2年間免除されるため、このタイミングで法人成りを検討することをおすすめします。
※ただし、法人1期目の開始日から6ヶ月間に課税売上高が1,000万円を超えると、2期目は消費税の課税事業者となるので注意が必要となります。

利益が800万円を超えてしまいそうな人

上記でも解説しましたが、所得税率は超過累進税率となり、利益が800万円を超えたタイミングで法人税の税率と逆転現象が生じるため、年間利益が800万円を超えそうな人は法人成りを検討することをおすすめします。

まとめ

事業を始める際に、法人として行うか個人事業として行うか、迷われるかたが多いと思います。
法人と個人事業の違い等をご説明させていただきましたが、事業内容や個々の状況により最善の事業形態は異なってまいります。
ご自身で判断されずに、迷われたらスタートアップサポート総合会計事務所にご遠慮なくご相談ください。