マイクロ法人とは
2024.12.21 更新
目次
マイクロ法人は法的な定義はありませんが、一般的には社会保険料や税金の負担を減らすことを目的に「社長1人で経営する会社」とされています。
今回はそのマイクロ法人についてお話します。
マイクロ法人と個人事業主の違い
個人事業主は税務署に開業届を提出するだけ開業することができますが、マイクロ法人を設立する場合は、定款の作成や法務局で法人登記などが必要で、会社形態のうち株式会社、合同会社、合資会社で設立することができます。
また、個人事業主の場合は、所得が増えると社会保険料や所得税が上がります。
一方で、マイクロ法人の場合は、役員報酬の金額を下げることで個人の社会保険料や所得税を抑えるだけでなく、個人の税率よりも低い法人税の税率を利用して節税効果を高めることができます。
さらに、マイクロ法人の場合は、経費として扱える幅が広がります。
たとえば、役員報酬や退職金、生命保険の一部や出張の際の日当などが経費として認められます。
マイクロ法人を設立する際の種類と費用
法人を設立する際には、まず会社の種類を選ぶことになりますが、その際は「合同会社」もしくは「株式会社」のどちらかが選ばれることが多いです。 それぞれの違いは、以下の通りです。
※表が見切れている場合は右にスクロールしてください。
マイクロ法人 | 個人事業主 | |
---|---|---|
資本金 | 必要 | 不要 |
手続き | 定款の作成や登記申請などの複雑な手続きが発生 | 比較的簡単 |
経費 | 事業に関連する経費を法人経費として計上可能 | 個人の支出と事業の支出の区別が必要で、収益との対応関係も考慮する必要あり |
社会的信用 | 取引先や金融機関からの信用が得やすい | 法人に比べて信用度が低いことがある |
合同会社 |
・設立費用は10万円程度 ・株式による資金調達が行えない会社形態 ・設立の手間や費用が株式会社よりもかからない |
|
株式会社 |
・設立費用は22万円程度 ・株式を発行して資金調達をすることができる形態 ・将来的に会社の規模を拡大させたい場合に向いている |
設立にかかる時間は、どちらも2週間~1ヵ月程度となります。
合同会社のほうが設立にかかる手間や費用が小さいため、マイクロ法人のように「自分1人でできる範囲の事業を行うだけ」「少しでも費用負担を軽くしたい」という考えがある場合は、合同会社を選ぶケースが多いです。
また、会社形態は後で変更することもできます。
まずは合同会社を設立しておいて、後々「株式による資金調達を行いたい」という考えになったら株式会社に変更する方法もあります。
マイクロ法人を設立するメリット
マイクロ法人を設立する5つのメリット
メリット1:税負担を軽減できる
マイクロ法人として事業活動を行うメリットのひとつが、個人事業主で活動する場合に比べて節税できることです。
個人事業主の所得税は「累進課税」であり、所得金額に応じて5%~45%の間で区分されています。
つまり、所得が増えれば増えるほど税率は上がり、最大で45%もの税金を支払わなければなりません。
それに対してマイクロ法人の場合は法人税の税制が適用となり、たとえば資本金1億円以下で所得金額が800万円を超える部分の税率は23.2%、800万円以下の部分は税率15%です。
個人事業主の場合は所得金額が900万円以上になると税率が33%になるため、目安として「所得が900万円を超える場合は法人化したほうが税負担を抑えられる」と認識しておくとよいでしょう。
さらに、個人事業主の場合は「売上=自身の収入」ですが、マイクロ法人であれば事業活動で得た売上は一旦法人の売上となり、その後「役員報酬」という形で給与として自身に割り振ります。
つまり、自身の収入は給与所得控除の対象になり、個人事業主の場合よりも課税対象金額が少なくなることも、所得税の負担を軽減できるひとつの理由です。
メリット2:保険料の負担を抑えられる
個人事業主として事業を進めていく中で社会保険料の負担が増えてきたと悩んでいる方も多いと思います。
実際に国民健康保険料は、所得額が増えるにつれて負担が増えていきます。
詳細は下記リンク(PDF)をご参照ください。
https://www.city.sapporo.jp/hoken-iryo/kokuho/documents/r6_64ika_kyuuyo.pdf
しかし、マイクロ法人を設立することで、この負担を抑える工夫ができるようになります。 社会保険料は役員報酬に応じてその負担が増えるという仕組みになっているため、自分の役員報酬を低めに設定することで社会保険料の負担を抑えることができるのです。
メリット3:経費として計上できる範囲が広くなる
個人事業主の場合は「プライベートの支出」と「事業用の支出」を明確に分ける必要があり、境界線があいまいな場合は経費として認められないことも少なくありません。
その点、マイクロ法人として事業活動を行う場合は経費計上できる範囲が広くなり、大きな節税効果を臨めます。
法人化することによって経費計上が可能になる例としては、以下のようなものが挙げられます。
- ・自宅兼オフィスの家賃
- ・出張時にかかる交通費や宿泊費(事前に「出張旅費規程」の作成が必要)
- ・車の購入費やガソリン代、修繕費
- ・生命保険料(法人名義で契約する場合)
- ・退職金 など
メリット4:社会的信用度が上がる
マイクロ法人をはじめとする法人を設立する際には、法務局に法人登記を行って商号や本店所在地、資本金などの情報を開示します。
登記内容は国税庁の法人番号公表サイト等で誰でも閲覧可能となり、事業実態を客観的に確認できる状態になることから、社会的信用度の向上につながるでしょう。
信頼性が上がれば事業活動がしやすくなり、売上アップも期待できます。
企業のなかには個人事業主とは積極的に契約しないところもあるため、取引先を増やしたい場合、事業の拡大を目指している場合は法人化するほうが得策かもしれません。
メリット5:資金調達がしやすい
社会的な信用度が上がることで、資金調達がしやすくなることも法人化におけるメリットです。
個人事業主よりも法人のほうが金融機関の融資審査に通りやすいほか、法人を対象とした補助金・助成金制度も利用できるようになります。
マイクロ法人を設立するデメリット
マイクロ法人を設立する3つのデメリット
デメリット1:法人設立の手続き費用がかかる
マイクロ法人を設立する際には、手続き時に費用が発生する点に注意が必要です。
設立費用は法人の形態によって異なりますが、たとえば株式会社の場合は22万円~24万円程度、合同会社の場合は75,000円程度が目安となっています。
デメリット2:経理などの事務手続きが発生する
個人事業主のときに比べて事務作業が増えることも、法人化に伴うデメリットのひとつです。
マイクロ法人の場合は法人として決算申告を行う必要があり、決算申告時には個人事業主の確定申告時に比べて多くの書類を作成しなければなりません。
専門知識も要することから税理士に業務委託を行って対応するケースが一般的ですが、その場合は業務委託費用がかかる点に注意しましょう。
なお、税理士に支払う費用は会社の売上高や取引件数が大きいほど高くなる傾向があり、たとえば年収1,000万円未満の法人であれば月々の業務委託費は10,000円程度(年に3~4回程度の訪問)が相場です。
デメリット3:経営が赤字でも法人住民税を支払う必要がある
個人事業主の場合、経営が赤字であれば所得税や住民税の支払いは発生しません。
しかし、マイクロ法人の場合は、たとえ赤字であっても均等割の法人住民税は納付する義務があります。
マイクロ法人と個人事業主の合わせ技のメリット
マイクロ法人と個人事業主の合わせ技のメリットは、個人と法人に所得をうまく分散させることで、適用される税率や支払う社会保険料の額を抑えられる可能性があるという点です。
また、個人事業の青色申告の場合は青色申告特別控除65万円も適用できるため個人事業の節税メリットもフルで活用することができます。
さらに、社会保険料を抑えるために役員報酬を過度に下げることで生活が難しくなってくる場合もありますが、生活費を個人事業の方でも稼げるため、マイクロ法人のデメリットを補うこともできます。
ただし、個人事業主とマイクロ法人で行う事業が同一の場合、税務署から税金逃れのために法人を作ったのではないかと指摘されてしまう可能性がありますので、個人と法人の事業内容、預金口座などの資金管理はしっかりとしていく必要があります。
まとめ
マイクロ法人の設立は社会保険料、税金を抑えるのに有効な手段と言えますが、マイクロ法人の法人形態の選択、個人事業主との合わせ技をする際には事業目的を明確に分ける必要があるなど、慎重な判断が必要になってまいります。
スタートアップサポート総合会計事務所では、マイクロ法人設立のサポート、ご相談をお受けしておりますのでお気軽にご相談ください。