賞与で法人税を節税できる?
2025.06.23 更新
目次
企業にとっては法人税を少しでも抑えたいと考える経営者がほとんどだと思います。
今回の記事では法人税の節税をしっかり行い、かつ、従業員への利益還元もできる方法のひとつである、決算賞与について解説いたします。
具体的な方法と経費計上における注意点もご紹介しますので、最後までご覧ください。
決算賞与のメリット
決算賞与のメリットを下記の項目に分けて説明いたします。
- ① 節税効果
- ② 社会保険料の削減
- ③ 従業員のモチベーションアップ
① 節税効果
決算賞与は従業員の方に対する賞与のため、その全額が経費となります。
要するに支給した全額が経費になるため、利益が圧縮され納付する税金が少なくなります。
例)500万円を支給する場合
500万円×税率30%=150万円の節税となる。
また、支給した賞与は一定の要件をクリアすることで「賃上げ促進税制」の対象となります。
支給した賞与額の15%~30%を法人税から直接控除することも可能となり、大きな節税効果が得られます。
「賃上げ促進税制」の詳細は下記をご確認ください。
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudai/chinnagesokushin06gudebook.pdf
② 社会保険料の削減
決算賞与については法人税の節税効果ばかりではなく、社会保険料の削減にもつながります。
同じ年収であっても支払い方法によって社会保険料の負担に差があります。
例)年収840万円/40歳以上の社会保険料
① 毎月70万円×12か月=年840万円
月205,996円×12か月=2,471,952円
② 毎月20万円×12か月+賞与600万円=年840万円
月61,120円×12か月+961,770円=1,695,210円
③ ①-②=776,742円
年間でだいたい80万円ほどの社会保険料の節約になります。
③ 従業員のモチベーションアップ
決算賞与は、会社の利益の状況に応じて支給されるものであるため、従業員の方も法人の利益状況に貢献しようという意識が生まれます。
また、人事採用の際にも決算賞与を支給しているという法人は魅力的であり、優秀な人材を雇用しやすくなるという副次的な効果も望むことが可能となります。
決算賞与のデメリット
決算賞与については、前項にてご説明しましたとおりメリットが多くありますが、
以下のデメリットもあります。
資金繰りの悪化
決算賞与を支給することで法人税等の節税につながりますが、あくまで賞与の支給は行うため、現金預金の支出は決算賞与を支給しない場合よりも多くなってしまい、結果として一時的に資金繰り状況は悪くなってしまいます。
毎年利益の何%を決算賞与として支給するという目安を設けたり、来期の資金繰り状況を整理して、無理のない範囲で支給する必要があると言えるでしょう。
支給時期と費用計上の要件
決算賞与を税務上の費用として計上するための要件を見ていきたいと思います。
決算賞与は利益操作に使用されるケースも少なくないことから、税務調査では必ず内容の確認がされる項目の1つとなります。
そこで、税務調査で否認されないための方法を2つご紹介いたします。
① 決算日前に支給する
税務上は、支出を伴わない費用について、その債務が客観的に成立している必要があります。
したがって、決算日前に支給を完了してしまえば、支出を伴わない費用ではないため、問題なく費用計上ができ、最も安全な方法といえます。
② 決算日後に支給する
来期に融資等を検討していたり、決算書の見栄えを気にされる場合や資金繰りの関係から少しでも支出を遅らせたい場合は、以下の要件をクリアすることで今期の費用計上とすることが可能です。
①決算日までに同時期に賞与が支給される全ての従業員に対して、賞与の支給額を各従業員に通知していること
②各従業員に通知をした賞与の金額を、通知した全ての従業員に対して、決算日の翌月末までに支払っていること
③今期に未払金計上していること
以上の要件を満たせば今期に全額費用計上することが可能です。
税務調査では①~③について必ず確認されますので、確実にエビデンスとして残すことが必要となります。
また、①に関しては、通知した書面やメールの文面などを保管することで、各従業員に通知したことを客観的に証明することができるため、必ず保管するようにしましょう。
まとめ
決算賞与は、法人税・社会保険料の節税だけではなく法人の雇用に関してもメリットがある手段なので、経営者の皆様にはぜひご検討していただきたい節税対策となります。
しかしながら、一時的に資金繰りを悪化させるデメリットもあるため、金額の決定や支払い時期については慎重に検討する必要があります。
スタートアップサポート総合会計事務所では法人税や賞与に関する豊富な知識と経験を持ち、
会社様のニーズに応じた最適な節税対策をご提案しておりますのでお気軽にご相談ください。