スタートアップサポート総合会計事務所
藁谷 翼 税理士事務所

ふるさと納税の「改悪」とは?
2025年10月からの制度変更と賢い活用法

 2025.09.13 更新

2025年も残すところあと3ヵ月ほどとなりました。ふるさと納税の駆け込みをそろそろ予定している人も多いのではないでしょうか? 今回の記事では、2025年10月に行われるふるさと納税の制度改正に関してご説明いたします。
ちなみに、過去の記事で「個人事業主が行うふるさと納税のメリットとデメリット」について解説しております。
個人事業主の方はそちらもぜひご覧ください。記事はこちら

ふるさと納税の基本とこれまでの流れ

ふるさと納税は、2008年に導入された地方創生のための制度です。
納税者が任意の自治体に寄附を行うことで、所得税・住民税の控除が受けられ、実質的な自己負担額は2,000円に抑えられます。
寄附先の自治体からは返礼品が届くため、「地域支援」「特産品の取得」「税負担の調整」という三つのメリットがある制度として広く普及しました。

ちなみに、ふるさと納税は厳密には「節税」ではありません。
税額そのものが減るわけではなく、翌年に納めるべき住民税等の一部を、寄附という形で前払いする仕組みです。
つまり、税金の使い道を自分で選べる「税金の前納」であり、制度の趣旨は地域貢献にあります。
近年は、楽天ふるさと納税やさとふる、ふるなびなどのポータルサイトの登場により、寄附の利便性が向上。
さらに、寄附額に応じたポイント還元などの特典が加わり、利用者数は急増しました。
2024年には寄附件数が5,800万件を超え、制度開始からの累計寄附額は1兆円を突破するなど、国民的制度へと成長しています。

2025年10月からの制度改正

実は2025年10月(令和7年10月)から、総務省の方針により、ふるさと納税ポータルサイトを通じた寄附に対しての「ポイント付与」が禁止されます。
これまで、楽天ポイントやAmazonギフト券などが寄附額に応じて付与されることで、実質的な負担が軽減される仕組みがありましたが、これが制度の趣旨を逸脱しているとの批判が高まっていました。

本来、ふるさと納税は「寄附」であり、返礼品はあくまで感謝の気持ちとして提供されるものです。
しかし、ポイント還元が加わることで、寄附が「買い物化」し、自治体間の競争が過熱。
返礼品の豪華さやポイントの多さが寄附先選びの基準となり、制度の本質が見失われつつありました。
総務省はこの状況を是正するため、2025年10月以降、仲介サイトによるポイント付与を全面禁止とする方針を打ち出しました。
これにより、制度の健全性を取り戻すとともに、自治体の財政負担軽減も図る狙いがあります。
今現在、まだふるさと納税を行っていないかたは、9月中に行っておくほうが良いでしょう。

税務的な観点から見たふるさと納税

ふるさと納税は「寄附金控除」として所得税・住民税の控除対象となりますが、控除には上限があります。
控除限度額は、年収・家族構成・住民税の所得割額などにより異なり、限度額を超える寄附は自己負担となります。
事前にシミュレーションを行い、適正な寄附額を把握することが重要ですが、総務省ホームページの他、各仲介サイトでシミュレーションが行えるサイトがありますので確認してみるのも良いでしょう。

また、申告方法にも注意が必要です。確定申告を行う場合は、寄附先自治体から送付される「寄附金受領証明書」を添付し、寄附金控除として申告します。
一方、給与所得者などで確定申告を行わない方は、「ワンストップ特例制度」を利用することで、申告不要で控除を受けることが可能です。
ただし、ワンストップ特例は年間5自治体までの寄附に限られ、申請書の提出期限(寄附翌年の1月10日)も厳守する必要があります。
ちなみに、寄付側が一番気になることは返礼品の「お得さ」ではないでしょうか?
実は返礼品の価値が高すぎる場合、税務上「対価性」が問われる可能性があり、 返礼割合は寄附額の3割以内、かつ地場産品に限るというルールがあるのです。
制度改正後はより厳格な運用が求められるでしょう。
つまり、返礼品を通常通り購入するときの金額(通常販売されていなければおおよその市販価格)が返礼品の3割程度であれば、 その返礼品は「お得」と言えるでしょう。

制度改正後もふるさと納税を賢く活用する方法

ポイント付与が廃止されるとはいえ、ふるさと納税の魅力は依然として大きいです。
制度の本質に立ち返れば、「地域支援」「地場産品の取得」「税金の使途選択」という三つの柱は変わりません。
むしろ、ポイント競争がなくなることで、自治体本来の魅力や返礼品の質が重視されるようになる可能性があります。
最近のふるさと納税の人気傾向としては、依然としてグルメ系は根強い人気がありますが、 次いで人気なのはお米やティッシュペーパー、トイレットペーパーなどの生活必需品となります。
特にお米に関しては昨今価格の下げ止まりが続いている状況のため、ふるさと納税を活用してお得にお米を手に入れるかたが増えているようです。
みなさまも、「日常生活で値上がりしていて困っているもの」に焦点を当てて返礼品を探してみるのも良いかもしれません。

まとめ

ふるさと納税は、単なる「お得な制度」ではなく、本来は地域とのつながりを再認識するための仕組みです。
2025年10月以降のポイント付与禁止は、一部の利用者にとって「改悪」と映るかもしれませんが、制度の健全化という観点では「改善」とも言えます。
弊社としては、制度の変更点を正しく理解し、納税者に対して適切なアドバイスを行うことが求められます。
控除限度額の試算、申告方法の選定、寄附先の選び方など、専門的な視点からサポートすることで、納税者が安心してふるさと納税を活用できる環境を整えることができます。
ふるさと納税の本質を見失わず、地域と納税者の双方にとって有益な制度として、正しく賢く活用していきましょう。